第9回おうみ佐保塾 公開講座   

              

    「東海道・大津町家・大津祭」     

                                               柴山直子氏  

                    大津市中心市街地活性化協議会委員

                      有限会社柴山建築研究所 一級建築士

            

  平成25年8月27日()、第9回おうみ佐保塾 公開講座「東海道・大津町家・大津祭」を大津ふれあいプラザで実施しました。残暑の厳しい日でしたが、兵庫・大阪・奈良・京都・滋賀支部会員と一般市民、取材記者を含む52名の方々が参加されました。

  今回は、大津市中心市街地活性化協議会委員の柴山直子氏(一級建築士)が、これまでの経緯と大津市中心市街地の景観まちづくりの担い手としての活動を話されました。

 

 大津とりわけ大津百町は、東海道の宿場町で京都に近くその影響を強く受けた。数々の戦乱や大火にもあったが、難を逃れた江戸末期以降の京町家の特徴をよく残していた。ところが、昭和初期、県の道路拡幅事業による「軒切り」によって建物の正面が削り取られた。そのため江戸期の外観を残す町家は少なくなったが、内部の意匠は建築当初のまま残っていて貴重である。

  大津市は平成15年に、全国で10番目の古都指定を受け、これを機会に、「古都大津の風格ある景観をつくる基本条例」(古都法)を策定し、市民と行政が一体となって、自然景観・歴史景観の保全と再生と創造のまちづくりに取り組んでいる。

曳山と祭りちょうちんが似合うまちなみ
曳山と祭りちょうちんが似合うまちなみ

  大津百町は、幕府の天領があったので各藩の蔵や代官所、京への出先機関があり、江戸と京都を結ぶ一大商業都市であった。また、門前町、城下町、港町、宿場町という四つの顔もあった。古都法による景観計画では、都心景観地域として、町割りや旧町名、町家などの歴史的資産を重視し、町なみの景観を保全し創生することを中心にしている。

 平成16年の調査で、町家が1600棟残っていたことから、大津百町町家再生研究会(10人)が組織され、柴山氏は町家居住者として加わわっている。重点事案を旧東海道、室町時代からの通称である「京町通(きょうまちどおり)」とし、住人の思いが一つになる「曳山と祭りちょうちんが似合うまちなみ」をめざし、町家再生と活用の基本とした。

  市が進める施策の一つは、市民による町なみ協定を締結することにより、伝統的様式建造物(町家)や一般建物などに修景予算をつけた。もう一つは町家の所有者と活用者とをつなぎ、町家を再生させる「大津百町・町家じょうほうかん」を設けた。

  大津祭は、大津百町で始まった湖国三大祭の一つで、元禄時代に曳山の形が整い、町衆の原動力を伝える伝統行事となり、現在は13基が巡行している。これは、神事ではなく町衆のイベントとして行われている。人を町衆とし、家を町家とし、町を町なみとする大津百町に歴史・文化を活かした暮らしとにぎわいを創出するには、この大津祭を核にする必要がある。さらに、それまであった大津祭曳山連盟の住民組織を一般人にも開かれた、まちづくりの担い手としてNPO法人大津祭曳山連盟とし、中心市街地の活性化のために、大津市や民間の団体と連携して活動している。

ちまきちくん
ちまきちくん

  柴山氏は平成20年、大津市中心市街地活性化協議会町家利活用プロジェクト会議の協議会委員の一人として、以下のような事業にも取り組んでいる。

  これまでのコンセプトを発展させ、天孫神社の傍で大津百町市(いち)の開催、旧町名を貼って似合う場所に大津百町旧町名の看板の復活、曳山と祭りちょうちんの似合うまちなみ関連事業、空き町家の活用としての大津百町・町家じょうほうかん、各町家に呼びかけた登録有形文化財を活かした事業、電線の地中化などの旧東海道まちなみ整備事業などの事例をスライドを見ながら丁寧に紹介していただいた。

  大津祭の曳山の巡行を2階で見る習慣になったのは、昭和初期の「軒切り」工事の後で、曳山のからくりの目線と2階に人が膝をついて見る目線がちょうどよく、同時期に2階は座敷に代わり、床の間(とこのま)を設けるなどハレの間(ま)となっていった。

  町家の内部は江戸時代の趣向を残しているところがあり、建築時やそののちに維持管理をした家主のこだわりを見る事例が多い。昭和初期に県が行った道路の拡幅事業では、軒切り前の町家の外観を撮影しており、当時は貴重だった写真を各町家に渡すという行政側の配慮もあったため、その後の町家・町なみの修景事業の一助にもなっている。

 

 講演会終了後は、柴山氏に大津百町館および大津祭曳山展示館をご案内いただいたあと、それぞれ京町通(きょうまちどおり)の町なみを見学しました。

 参加者からは、柴山直子氏が企画作成された“大津百町まち遺産マップ”を片手に大津の町をゆっくり歩いて見たいという声が多く寄せられました。

             

 ↓ 講演会のようす